無修正AV、児童ポルノを販売する怪しいビデオ店でマジックマッシュルームを買ったら、ヤバいことになってしまった話。

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無修正AV、児童ポルノを販売する怪しいビデオ店でマジックマッシュルームを買ったら、ヤバいことになってしまった話。

裏ネタ

なかぞの 0 4,180 2019/11/18

「女優の沢尻エリカ、MDMA所持で逮捕」
 
ちょうどこのコラムを書いているとき、その一報が飛び込んできました。
驚きと同時に、なんだか少しモヤッとしたものが込み上げてきました。

イングヴェイおばさんの店

これは、私が大学生だった頃の話です。ひとり暮らしをしていたアパートから自転車で15分くらいのところに、販売専門のビデオ店がありました。同じ大学に通う友人から教えてもらった店で、アダルトコーナーが充実していました。当時、付き合っている女性もいなかった私は、時々その店でエッチなビデオを買って寂しさを紛らわしていました。
  
プレハブ造りの古ぼけた小さな店は、マンションや民家が建ち並ぶ住宅街の中にあって、明らかに怪しい雰囲気を放っていました。
 
そのビデオ店のことを、私と友人はひそかに〝イングヴェイおばさんの店〟と名付けていました。
 
店を切り盛りしていたのが60代くらいの大柄なおばさんで、長い茶髪をだらりと垂らしていて、どことなく西洋人ぽい顔立ちをしていたのが、スウェーデン出身のロックギタリスト、イングヴェイ・マルムスティーンに似ている気がしたのです。
  
機嫌のいいときは気さくに話しかけてくるのですが、そうでないときは態度が非常に横柄で、汚い言葉遣いをし、まったく客商売をする気が感じられませんでした。
 
たまに店の入り口の前で、腰に手をあててでんと立っているのですが、私たちが中へ入ろうとすると、「何しにきたんや?」と言い、威嚇するような目つきで睨んでくるのでした。
  
「あのふてぶてしい態度、まるで王者イングヴェイだ!」
 
友人がそう口にしたのをきっかけに、その店のことを〝イングヴェイおばさんの店〟と呼ぶようになったのでした。

ヤクザが出入りする怖い店 

〝イングヴェイおばさんの店〟は決してAVだけを取り扱う店ではありませんでした。
 
店内へ入ると、そこには一般の映画やドラマ、アニメなどのビデオソフトがずらりと並んだ棚があり、休日に行くと小学生くらいの子供が親といっしょに来ていることがありました。
 
しかし、カーテンで仕切られたその奥にはアダルトコーナーがあり、AV作品ばかりでなく、成人向けの本や雑誌、大人のおもちゃなども販売されていました。
 
無修正AVばかりが並ぶ棚もありました。素人ものが多く扱われていて、中には児童ポルノも堂々と売られていました。
 
そんな明らかに違法なソフトを販売している店です。店主のイングヴェイおばさんはもちろん、店にかかわっているらしい連中も、やはりカタギではありませんでした。
 
見るからにヤクザ者とわかる男が出入りするところを何度も見かけたことがありました。
 
ただのチンピラ風ではなく、100m離れた場所から見ても、シルエットだけでそれとわかるレベルの中年のヤクザが、店の前でイングヴェイおばさんと立ち話をしていましたし、その男が店のカウンターに座っていることもありました。

ドラッグを扱う危ない店

無修正作品や児童ポルノを販売し、ヤクザも出入りするような店でしたが、実はもっと危険なものも販売していたのでした。
 
ハーブです。現在では違法成分が入ったものを危険ドラッグと呼び、取り締まりが強化されていますが、当時はまだそれほど危険視されていない印象がありました。
 
ある日、友人とふたりで店を訪れると、アダルトコーナーの壁に「ハーブ入荷しました!」と張り紙がしてあって、唖然としたことがあります。まるで「冷やし中華はじめました!」くらいのノリでハーブを販売していたのです。
 
しかし、さすがにまずいと思ったのか、次に店を訪れたときには、その張り紙は剥がされていました。
 
それでも口コミで広まり、その店が脱法ハーブを販売していることを知っている学生は、私のまわりにもけっこういました。
 
タバコの葉を抜き取り、代わりにハーブを詰めて使用する方法もあります。当時はキャンパス内でタバコを吸う学生はいくらでもいましたから、中にはハーブを吸っている者もいたかもしれません。

幻覚キノコ

イングヴェイおばさんの店では、ハーブの他にマジックマッシュルームも販売されていました。俗に「幻覚キノコ」と呼ばれているものです。
 
その当時はまだ合法ドラッグという位置づけで、危険度の高い脱法ハーブと比べると手を出しやすい代物でした。合法ですから、使用、所持していても処罰の対象にはなりませんでした。
  
「イングヴェイに『マジックマッシュルームありますか?』って聞いたら、こっそりレジの中から出してきたぞ」
 
友人は言うと、マジックマッシュルームを実際に使用した感想を話し始めました。
  
細かく刻んだマジックマッシュルームを紅茶の中に入れて飲んだという友人。
 
しばらくすると酒を飲んだときのような酩酊状態になり、赤と緑のものだけが異様に綺麗に見えるようになるのだと言いました。
 
「べつに体に害はないし、バッドトリップする心配もない」
 
そう言って、友人は私にもマジックマッシュルームをすすめてきました。
  
「紅茶じゃないとダメなん?家にあるのが麦茶だけなんやけど」
 
私が聞くと、友人は「カップ麺に入れて食べてもいいらしいで」と言いました。
  
かなり不安はあったものの、最終的に好奇心のほうが勝ってしまい、後日、私はイングヴェイおばさんの店に足を運び、マジックマッシュルームを購入しました。
  
「あのう…すいません、マジックマッシュルームありますか?」
 
私が小声で恐る恐る尋ねると、イングヴェイは口もとにいやらしい笑みを浮かべました。
レジを開け、お金を入れてあるトレーを持ち上げると、その下から〝ブツ〟を取り出しました。
 
「これか?」
 
イングヴェイは小馬鹿にしたような目で私を見ると、それをカウンターの上にぽんと放りました。
  
マジックマッシュルームはエノキによく似た形をしていました。色は薄茶色で、傘の部分がエノキよりも少し大きかった気がします。乾燥した状態のものが5本くらい、透明のビニールで真空パックされていました。
 
販売価格ははっきりとは覚えていないのですが、たしか¥1200くらいだったような気がします。
  
支払いを済ませ、マジックマッシュルームを鞄のいちばん底に突っ込みました。
店を出ると、思わず溜め息がこぼれました。
 
いくぶん気持ちは焦っていましたが、できるだけ冷静を装い、ゆっくりと自転車を走らせ、自宅アパートへ向かいました。途中、自転車に乗った警官とすれ違ったときは思わずヒヤッとしました。合法ドラッグとはいえ、やはり悪いことをしているという後ろめたさが、心のどこかにあったのだと思います。

 マジックマッシュルームをカップ麺に入れて食べたら…

買い置きしてあった日清のカップヌードルにマジックマッシュルームを入れて食べるつもりでしたが、アパートに帰ってきてキッチンを確認したところ、粉末のコーンポタージュスープがあるのに気づき、まずはそれで試してみることにしました。
  
ビニールの封を切ってマジックマッシュルームを2本だけ取り出し、細かく刻みました。
熱い湯で溶かしたコーンポタージュスープにそれを入れてかき混ぜ、ゆっくり飲みました。
 
すべて飲み干したあと、テレビを見ながら30分ほど時間をつぶしていたのですが、なんの変化もありません。
 
友人が言っていたような酩酊感もなければ、赤と緑だけが綺麗に見える感じもありませんでした。
 
ひょっとして食べる量が少なすぎたのだろうか。そう考えた私は、日清のカップヌードルに残りのマジックマッシュルームを全部入れ、熱湯を入れて3分待ちました。
  
ちょうどお腹が減っていた私は、あっという間にカップヌードルを平らげ、そのあとスナック菓子を食べながらテレビを見ていました。
  
1時間くらい経ったときです。なんとなく体が重く、けだるさを感じ始めた私は、床の上にごろりと寝転びました。吐き気がするとか、頭痛がするといったことはまったくありません。
 
ただなんとなく体がだるいのです。意識はいたってクリアーで、むしろ普段より冴えている感じさえします。
  
「ついに来たか…」
 
そう思った私は、重い体を起こしてベランダへ出ました。
 
日が暮れかかっていて、遠くのほうのビルやマンションに灯りがともっていました。
 
なんとなくですが、それらの灯りがいつもより鮮明に見える感じがしました。赤と緑のものを見てもとくに変わった様子はありませんでしたが、光がいつもより若干まぶしく感じられました。
 
そのうち、体がさらに重たく感じられるようになってきて、部屋の隅に畳んで置いてある布団にもたれかかるようにして寝転がりました。
 
私はだんだん怖くなってきました。何かおかしな症状が現れて、救急車を呼ばなきゃいけないようなことになったらどうしよう。病院へ行けば警察に通報されるのだろうか。気が狂って周りに危害を加えてしまったらどうしよう。そんなことになるくらいなら心臓発作か何かでぽくっと死んでしまったほうがましだ…。
 
そんなネガティブな思考ばかりが頭の中をめぐり、不安はつのる一方でした。
私は猫のように体を丸め、そのまましばらく横になっていました。
 
「あっ!」
 
私は思わず声を上げてしまいました。
バイトに行かなきゃならないのをすっかり忘れていたのです。
 
塾講師のバイトをしていて、普段ならその曜日は休みなのですが、この日は中学生のテスト対策授業があり、臨時で出勤することになっていたのでした。
  
今から準備すればじゅうぶん間に合います。
私は重たい体を起こすと、ふーっとひと息ついてから、ゆっくり立ち上がろうとしました。
 
ところが、立てないのです。
 
足腰に力が入らず、立ち上がろうとしても、腰砕けのような状態になってしまうのです。
 
焦りながらも、床に手を突いてなんとか立ち上がろうとしました。
しかし、どうしても足腰の踏ん張りがきかず、すとんとその場に座り込んでしまうのです。
 
下半身がしびれているのとは違います。感覚はしっかりしていて、床の上に足をついた瞬間は普通に立ち上がれそうな気がするのですが、力が入らないのです。
 
例えるなら、意識はしっかりしているのに、体だけ泥酔している感じです。
 
いささかパニック状態に陥ってしまいましたが、何とか気持ちを落ち着かせると、テーブルまで這って行き、携帯電話を手に取り、また布団のところまで戻りました。
 
そして同じバイトをしている友人に電話をかけました。彼は今日は休みのはずでした。
私はどう考えてもバイトに行けそうな状態ではありませんでした。
 
友人が出ると、急な体調不良でバイトに行けなくなったから、代わりに行ってくれないかと頼みました。友人はOKしてくれ、教室長に伝えておくと言いました。
 
電話を切った私は深い溜め息をつき、また布団にもたれかかって横になりました。
 
救急車を呼ぶことも考えましたが、騒ぎになるのが嫌だったので、とりあえず、もうしばらく横になって様子を見ようと思いました。
 
もし症状が悪化するようなら、そのときはあきらめて119番通報しようと考えました。
 
 
そのまま2時間くらい寝ていたと思います。携帯電話が鳴って目を覚ますと、あたりは真っ暗になっていました。携帯電話の画面が白く光っていました。
 
「もしもし」
 
先ほど電話をかけたバイト先の友人からでした。授業が終わったところらしく、私が担当している生徒に出す宿題の範囲を確認するために電話をかけてきたのでした。
 
友人にテキストのページ数などを伝え、電話を切ると、ゆっくり体を起こし、恐る恐る足に力を入れてみました。
 
すっと立ち上がることができました。けだるさもなく、まったく普段どおりの体に戻っていました。
 
安堵した私は、それ以上ないくらい深い溜め息をつき、その場に座り込んでしまいました。
 
 
怖い思いをしたうえ、友人や職場にも迷惑をかけてしまったことを私は深く反省しました。
 
それ以来、もう二度とドラッグになど手を出さないと心に誓いました。
  
 
※この記事は1998年頃の体験をもとに書いたものです。2012年6月6日以降、マジックマッシュルームは麻薬原料植物として規制されるようになりました。輸入、輸出、栽培、譲り受け、譲り渡し、所持、施用、広告といった行為は法違反になります。違反すると、懲役や罰金に処せられることがあります。

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この記事を書いた人

なかぞの

大阪府生まれ。22歳で文芸同人誌に参加。文学・アート系雑誌での新人賞入選をきっかけに作家業をスタート。塾講師、酒屋の配達員、デリヘルの事務スタッフなど様々な職を転々としたのち、現在はフリーライターとして活動中。足を踏み入れるとスリルを味わえそうな怪しい街並み、怪しいビルの風俗店を探し歩いている。

なかぞののツイッター
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