【実話】売上金を持ち逃げしたデリヘル店長が特殊詐欺グループとつながっていた!?

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【実話】売上金を持ち逃げしたデリヘル店長が特殊詐欺グループとつながっていた!?

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事件

なかぞの 2 261 2024/03/04
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こんにちは、なかぞのです。

いつも私の記事を読んでいただき、ありがとうございます。
早いもので、この3月で風俗マニアックスデビュー5周年を迎えることとなりました。

「自伝を丹念に書いていけば、書くことは決して尽きることはない」という、小説家・小川国夫氏の言葉に倣い、これまでこつこつと執筆を重ねてまいりました。

年に2回くらいは「もうこの仕事やめようかなぁ」と思うときがあるのですが(笑)、辞めずにこれまで続けてこられたのは、ひとえに読者の皆さんの支えがあったからだと思っています。

自分の作品を読んでくれている人がいるのだと思うことが、執筆へのモチベーションにつながっています。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

まだまだ至らない物書きではありますが、今後ともどうぞよろしくお願い致します。


さて今回は、近年よく話題になる特殊詐欺に関連した話をしてみようと思います。私自身が体験した、ちょっとヒヤッとしたエピソードもまじえて。

売上金を持ち逃げした店長とばったり遭遇

先日、梅田のヨドバシカメラへ行った帰りのこと。駅へ向かって歩いていると、くたびれた黒スーツを着た中年の男が、ママチャリを漕いで横断歩道を渡って来るのが見えました。

あの人通りの多い交差点で自転車に乗っている人はほとんどいませんから、嫌でも目に入ってきたのです。

その男の姿を見て、私はとっさに目をそらしました。私がかつて働いていたデリヘルで店長をしていた田中(仮名)だったのです。

彼は店の売上金を持ち逃げし、姿をくらました人物でした。いっしょに仕事をしていたとはいえ、できれば関わり合いになりたくありませんでした。

田中がそばを通りかかると、私は下を向いて顔を隠しました。しかし、それより先に彼のほうが私に気づいたようでした。

「中園ちゃん?」

田中は人ごみの中で自転車を止めると、私の名前を呼びました。私が無視して歩き去ろうとすると、彼は「おーい、中園ちゃーん。ちょっと待ってよー」と大きな声を出しました。

あんな盗っ人みたいな真似をしておきながら一体どんな気持ちで声をかけてきてるのか…。
私はちょっと嫌な気持ちになりましたが、仕方なく立ち止まると、彼のほうを見て、いま初めて気づいたようにちょっと驚いた顔をして見せたのでした。

信号が点滅し始めたのを見て、私はまたヨドバシカメラ側へ引き返しました。田中は自転車を押しながら私のほうへやって来ると、はにかんだような表情を浮かべて「元気にしてた?」と言いました。

私はどう答えていいのかわからず、押し黙ってしまいました。束の間の気まずい沈黙を破るように、田中がありきたりな世間話を始めました。

彼の中にもやはり、それなりにわだかまりが残っているのか、話をしている間ほとんど私の目を見ようとはしませんでした。

「俺、いま日本橋のほうでエステやってるんやわ。メンズエステや」


田中は口元に照れくさそうな笑みを浮かべました。私が一瞬いぶかしげな目を向けたからか、彼は慌てたように「いかがわしい店とちゃうよ。普通の健全なエステやで」と言いました。

「もし気が向いたら遊びに来て」

田中は私に名刺と割引券を手渡してきました。

「ほな、もう行くわ」

彼はそそくさと自転車にまたがると、私のほうを一度も見ずに走り去って行ったのでした。

素人詐欺師から金を巻き上げられそうになったので…

最寄駅から自宅へ帰る途中、ちょっと近道をしようと思い住宅街の中の細い道を歩いていると、「すみません…」と見知らぬ若い男が声をかけてきました。

20代前半くらいでしょうか。ひょろっとした体形の、メガネをかけたおとなしそうに見える若者でした。黒色のマスクを顎のあたりまで下ろしていました。その若者の目を見た瞬間、私は何となく嫌なものを感じました。

「すみません。あのー、ぼく、精神障害者なんですけど、今ちょっとかなりつらい状態で…。家に帰りたいんですけど、帰りの電車賃がなくて困ってるんです…」

若い男はしんどそうな顔をしていました。しかし、彼の言葉を鵜吞みにするなどもってのほか。詐欺の可能性もあります。

「あいにく現金を持ち合わせてないのでねぇ…」

面倒なことにかかわりたくなかったので、私はそう言ってその場を立ち去ろうとしました。

「あの、本当につらい状態なんです。なんとか助けてもらえないでしょうか?」

若者は哀願するような声で私に言いました。口調はしっかりしているのですが、どこか目の焦点が合っていないような、ボーっとした表情を浮かべていました。

本当に病気なのかな?と思った私は、「そんなにつらいんだったら救急車を呼びましょうか?近くにクリニックもありますけど」と言いました。すると若者は、「ぼく、そういうところには行きたくないんですよ」と口をとがらせました。

なんか怪しいなと思い、私は「電車賃がなくて困ってるんだったら、交番へ行ってみたら?」と言い、駅前の交番の場所を彼に教えました。

私が交番という言葉を出したとたん若者の態度が急変し、「あ、わかりました。すみません」と言うと、慌てた様子で私の前から立ち去ったのでした。

曲がり角まで来たところで振り返ると、若者がポケットに手を突っ込んで近くのマンションへ入って行くのが見えました。おそらく素人詐欺師でしょう。日ごろから通行人に声をかけ、ああいった手口で金を巻き上げていたのかもしれません。

特殊詐欺の電話がかかってきた!

素人詐欺師と思われる男から声をかけられた翌日、こんどは携帯に詐欺電話がかかってきました。

自分の部屋でSARD UNDERGROUND(ZARDのトリビュートバンド)の曲を聞いているときに着信があり、見ると非通知だったので拒否しました。

すると5秒もしないうちにまた非通知でかかってきたのです。再度拒否すると、またすぐにかかってきました。5秒おきに6回もかかってきて、さすがにイラッとして電話に出ました。

「中園(私のフルネームで)さんの携帯電話でお間違いないでしょうか?」
「はい、そうですが…」
「わたくし、○○県警捜査2課のヤマグチ タカシという者です」
「はぁ…」

話を聞いていると、特殊詐欺グループのマネーロンダリングに私名義の××銀行の口座が使用されていた形跡があり、このまま放っておくと私まで罪に問われる可能性があるとかなんとか…。

あまりに馬鹿馬鹿しくて笑ってしまいそうになりました。私は××銀行の口座を持っていませんし、電話の相手の話し方があまりに紋切り型で、コールセンターのオペレーターみたいな調子だったので、すぐに詐欺だと気づきました。

現在△△県警と合同で捜査していて、そちらの担当者へ電話を転送するので、詳しい話し合いをしてもらえないかと、私に言いました。

展開が面白かったので、ちょっと話に乗ってやろうと考えた私は、その担当者とやらにつないでもらい、相手からの質問をのらりくらりかわしつつ、色々と情報を聞き出してやりました。

相手も手慣れたもので、私が聞いたことにスラスラと答えてくれるのです。警察署内での立場や階級、捜査責任者の名前、被疑者が逮捕された場所や日時まで聞き出したのですが、すべてちゃんと答えてくれました。あらかじめマニュアルが用意されているのでしょう。

ひと通り話を聞いたあと、私が「こんな重大なことを電話ではお話しできませんので、いったん近くの警察署へ行って確認してきます」と言うと、相手は「それは困ります。△△県警でないと捜査状況を把握しておりませんので」と返してきました。

そして、私が吹き出しそうになるのをこらえながら「知り合いの刑事さんがいますので、そちらに声をかけてみます」と言い終わらないうちに、相手はプツッと電話を切ってしまったのでした。

警察署へ相談に行ってきた

私はあきれてものも言えませんでした。典型的な特殊詐欺の手口でした。前日の若い男に続いてこの詐欺電話。さらにあの盗っ人店長のことも思い出して、だんだん腹が立ってきました。

相手はこちらの電話番号だけでなくフルネームまで知っていましたから、念のため警察に通報しておいたほうがいいかもしれないと考えました。

先ほど相手から聞き出した情報はすべてメモしておいたので、私はそれを持って最寄りの警察署へ向かいました。

窓口で応対してくれたのが、たまたま特殊詐欺担当の刑事でした。事件性がないと言われ門前払いされることも想定していましたが、その刑事は親身になって私の話を聞いてくれたのでした。

私と同じように詐欺電話を受けて警察署まで相談に来る市民は多いそうです。特殊詐欺に関する通報は全国で毎日のようにあり、後を絶たないのだとか。

「このまえパトロールしてたら、私の携帯に詐欺グループから電話がかかってきましたよ。そんなこともありますからねぇ」特殊詐欺担当の刑事はそう言って笑っていました。

非通知でかかってきた詐欺電話に対しては、よほどの事件性がないかぎり捜査はできないそうです。「今回は実質的な被害を受けてらっしゃらないので、防犯指導だけさせていただきました」とのこと。色々とアドバイスをしていただき、私は礼を言って帰ってきました。

名刺に書かれた住所をたどってみると

警察署で言いたいことをぜんぶ吐き出し、アドバイスをしてもらったおかげで、もやもやした気分もだいぶ晴れました。しかし、田中と再会したあとに2日続けて詐欺未遂に遭ったことを考えると、あの田中という盗っ人のことが疫病神のように思えてくるのでした。

ふと、田中から渡された名刺のことを思い出しました。エステの割引券といっしょに上着のポケットに入れたままになっていました。

田中が経営しているというエステの住所は「大阪市浪速区※※※」となっていました。それを見たとき、何か引っかかるものがありました。その住所に何となく覚えがあったのです。

私はハッとしました。その住所はたしか、私の知り合いの中国人エステ嬢が住んでいたマンションの場所だったはずです。

すぐにグーグルで検索してみると、やはり思った通りでした。ストリートビューに映っていたのは、私がかつて一度だけ訪れたことのあった古いマンションでした。

しかし、それほど驚きはしませんでした。偶然などというものを信じられなくなった出来事を、私はこれまでにいくつも経験してきたからです。

原盤屋(AV作品を違法にコピーして販売する業者)の送り状の住所をたどってみると、そこが詐欺グループのアジトだったうえ、同じビルには闇美容クリニックや、かなりディープなフェチ系の写真スタジオまで入居していたということもありました。

その中国人エステ嬢が住んでいた部屋は、ある不動産業者の男の名義で借りていたものでしたが、のちにその男は不動産がらみの詐欺で逮捕されました。暴力団とのつながりもあったようです。

怪しい人物というのは、自然と怪しい場所に集まって来るものなのでしょう。田中は健全なエステをやっていると言っていましたが、これもまた怪しいものです。

「やれやれ…」

フィリップ・マーロウならきっと、そうつぶやいたに違いありません。

私は溜め息をつくと、田中からもらった名刺と割引券を破り捨てました。


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当コラムコーナーは、実話もフィクションも入り混じっています。読み物エンターテイメントとしてお楽しみいただく目的で掲載しており、記事の行為を推奨したり、犯罪を助長するものではありません。

この記事を書いた人

なかぞの

大阪府生まれ。22歳で文芸同人誌に参加。文学・アート系雑誌での新人賞入選をきっかけに作家業をスタート。塾講師、酒屋の配達員、デリヘルの事務スタッフなど様々な職を転々としたのち、現在はフリーライターとして活動中。足を踏み入れるとスリルを味わえそうな怪しい街並み、怪しいビルの風俗店を探し歩いている。

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